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【前置き】昔のポエムを読む気持ち【長いよ?】

昔々、ネットの大海の片隅に、大手ゲーム攻略サイトがありました。

そのサイトは、コミュニティ関係が非常に充実しており、
何かのきっかけで足を踏み入れた私は、
そこで出会った友人たちと毎夜楽しく、
くだらない話で盛り上がったりしておりました。

コミュニティの一つに

「FF妄想板」

というのがありました。
最初の頃は「どうせ同人的なアレでしょ」なんて
見むきもしなかった私ですが、
ある日、友人の一人に誘われて
そこで「小説」を書き始めることになります。

もちろん、誰に頼まれたわけでもありません。
強いて言うならば友人に誘われた形ではありますが、
最後の方は返事や感想をいただけるのが面白く
とにかく、書きまくっていました。

掲示板の平均年齢が比較的高めなこと、
「勝手に書いてるもの」に違いはないんだけど
決して「自己満足だから何でもあり」
というものではなかったこと、
また、そういう人たちとの交流が楽しかった、というのもあります。

・・・・まあ、多少美化はしてるかもしれませんが。

ほどなくして、長期休みに入った
思春期さんたちが多く現れ始め
掲示板が荒れ、コミュニティは閉鎖されることになります。






最近、PCの中身を整理した際、
当時のテキストが大量に出てきました。
その多くは、掲示板という特性を利用して
「長編小説の形をとりながら、レスで今後の希望的展開を募り、それに対応して続きを書いていく」
物だったり、当時同様に長編を書いていた友人と
二人でキャラを決め往復書簡を行っていたりと、
公開できないものばかりですが、その中で一つだけ、
掲示板を知らなくても読めそうなものがあったので、
ちょっと、公開してみようかと思います。



・・・・・昔の、ポエムを朗読するような気持ちです。


笑ってやってくれ。

ただ・・もしも。もしもですよ?
もしも、当時のことを知っている人がいて、
もしかして、

「どんたん?」

とか言われたら、素敵だなと・・・
うん。・・・ごめん・・・ほんのちょっとだけ思ったんだ・・・。

最初の試みだから、今回は上げますが、
様子を見ながらこっそり更新していくことになると思います。
あと、最初だからいろいろ言い訳も書く。

本気で長いので何回か続きます。

【“【前置き】昔のポエムを読む気持ち【長いよ?】”の続きを読む】
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  1. 2000/10/12(木) 00:00:00|
  2. 【物語】FFXのお話
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2

彼が駆けつけた時、浴槽は既にピカピカだった。
いや、正確にはそう見えただけだったのかもしれない。
何故なら、彼がここにかけつけるまでの間に
わずかながらも浴室から漏れ出たその気体が
彼の目を少しずつ汚染していたから。

足を踏み入れた瞬間、むせかえるほどの刺激が彼の鼻を襲った。
更に目の奥がチカチカとし、白を基調とした浴室は
複数の光の点滅でまぶしいほどに輝いて見える。
思わず目を細め、なんとかその焦点を合わせると、
浴室のちょうど中央で、空になった洗剤の容器を握り締め、
彼女がぼんやりと座っていた。
更にその傍らには「こすらずよく落ちる!」という謳い文句で有名な違う種類の洗剤の容器。
手にとってそれを見れば、そちらもすっかり空だった。

おそらく、焦点があっていないだろうその目で
彼女がぼんやりとこちらを振り返る。

左右違った色の目にはとめどなく、涙。
すっきりと通ってはいるが決して高すぎない鼻からは、いわゆる、水っ洟。
口は半開きにゆるくあけられており、そうでもしなければ呼吸すらままならない様子。
おまけに、喉の異物をなんとか外に出そうと、とめどなく咳込んでいる。

「やっばり、ぎでぐれだんだで・・・
ざなるがんどえいぶしゅのえーしゅぐん・・・」

何度も咳込みながら、ときたま嗚咽を練りこみ
涙と鼻水とよだれで顔をぐしゃぐしゃにしながら、
やっとそれだけ、彼女は言った。
(正確には、彼がやっとそれだけを聞きとれた。)


「何やってるんだよ!風呂掃除の時には
換気扇回せっていったじゃないか!!」



大きく浴室のドアを開け放ち、彼は怒鳴った。
更に、手に持った容器を一瞥し、怒りに任せて浴室の外に放り投げた。


「混ぜるな危険って書いてあるじゃないか!!」


怒りの為なのか、それともこの塩素のせいなのか
自分も涙ぐんでいることがわかる。

いけない。早く、ここから立ち去らなければ。


「助けるッす!」


自分を元気付ける為か、それとも彼女にそう伝えたかったのか。
無理矢理若物ぶって昔の口癖なんぞをいってみる。
同時にそんな自分がおかしくなって、少し、笑ってしまう。

もうこんな口癖が、似合う年でもないのに・・・・

かつてはシンを倒した英雄も、そして奇跡的に海から生まれなおした男も
今では倦怠期を迎えた、どこにでもいる夫婦の片割れである。

そう、ほんのちょっと前までは、
彼らの絆が、終わらないナギ説と、
出来る筈のない再会という奇跡を生んだのだ、
そんな風にスピラ中をわかせていたというのに。
そして今でも、その絆が、永遠であると、
スピラ中の人たちが信じていると言うのに。


その永遠を、最も信じている人物が、
誰よりも、今の二人を受け入れられないなんて。


永遠なんて、俺達が終わらせてやる。
そういって、あの闘いに挑んだというのに。
皮肉なものだ。

とかなんとか、今は考えている場合ではない。
とにかく、彼女と二人、ここから脱出しなければ。
息が出来なくなるほどのこの刺激の中で
彼自身も必死であった。

ぼんやりしてる場合じゃない。

こんな所に長時間いたら、自分も意識を失ってしまう。
今や一発逆転回復魔法をつかえる相手が最も「混乱」状態なのだ。
とにかく、綺麗な空気。そして水。
それを求めて、彼は、彼女をつれて走り始めた。
  1. 2000/10/11(水) 02:29:01|
  2. 【物語】FFXのお話
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3

それは、どこかで見た事のある風景だった。
青い、どこか、森のような風景。
いつのまに、こんな所まできたのだろう?
さっきまでの自分は、夫がいる身でありながら、
失ってしまった恋人に思いを馳せ、
その罪悪感から夫のために、必死で風呂を磨いていたというのに。

・・そうだ・・連れ出されたのだったわ。
あの時、確かに、ザナルカンドエイブスのエース君、
君がいた。・・・じゃあ、この隣ではしっているのは、誰?
・・・・夫?・・・夫って・・?私・・・・・

冷たい夜気に触れ、しばらく走っていると、まず最初に涙がかわいた。
それから、冷たい空気を肌で感じるようになり、
やがてその感触が脳を覚醒させ、それまではぼんやりともやがかかっているようで
どこか遠くにあるようだった風景が、くっきりはっきりとその輪郭を帯びてきた。

なんだかひさしぶり。
本当に久しぶりに。
こんな風に景色が見えるような気がするわ…


何もかもがクリアーになり、脳が、いや、心が、まるできっちり6時間眠って起きた朝のように澄みきっている。


やがて少しづつではあるが五感が戻り
冷たい向かい風の抵抗を全身で受けとめ
彼女の体がすっかり冷えきった頃には。
彼女の感覚は「痛いほど寒い」と
感じるまでになっていた。

ただ、一点を残しては。

ふらつく彼女の足を支えるために、
彼女を抱えるようにして腰にまわされた彼の腕。
ほんの少しだけ前を行き、彼女を導く為に繋がれた彼の手。
そんなフォークダンスのような体勢が歩きやすいわけはなく、
彼女の足は、もつれにもつれた。
それでも、彼女ははっきりと感じた。
冷たい風に当たり、水っ洟はさっきよりもひどくなっていたが、
それでも、一緒に走る彼を、彼女は本当に久しぶりに見た様な気がしたのだった。


随分と、薄くなっちゃったんだなあ…


ほんの少しだけ前を走っているわけだから
自ずと彼の後頭部にその目は注がれる。
夜の闇の中でも、彼の明るい髪の色は目立った。

だから、あんまり染めない方がいいよっていったのに…

ただでさえ、水中でやるスポーツの選手なのだ。
プールの塩素が、髪にいいわけはない。

それでも、彼は染めつづけた。
スピラでの彼は「終わらないナギ説を作り出した英雄の一人」であり、
スピラ中が夢中のあのスポーツ、ブリッツボールのエースなのだから。

そうすることで得られるイメージは、何よりも、大切なものであったらしい。

スピラ中の人々が彼に「常勝」を期待し、「英雄」である事を求める。
基本的にお調子ものだから、彼もそれに答えようとする。
その結果、でてきた白髪は幾度となく染め直され、
細く、コシがなくなってきた髪の毛は年々ハードな
ジェルやワックスで固められた。
抜けるのは、当然である。

いや、本当は、人々の期待に答える為だけではない。
彼自身もまた、おとろえゆく自分の体を
そうすることで、ごまかし続けていたのだろう。

いくらスポーツの選手だからといってよる年波には勝てない。
すぐ傍を走る彼の体は、かつてシンを倒す為に共に走ったあの時と同じではないし
そして自分もまた、彼から見れば、確実に年をとっているのだろう。

そう言えば…この間黒ずくめのおばさんが
突然やってきて・・・・・・誰なのかしらと思っていたけれど。
そうか・・・・・・あれは、ルーだったのだわ。

急にクリアになった頭は、本人が聞いたら
怒りそうなくらい失礼な事を平然と考え始めるようになっていた。

  1. 2000/10/10(火) 02:51:10|
  2. 【物語】FFXのお話
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4

青い蝶を求め、何度も何度もこの森にはいったのは、
そんなに遠い日の事ではなかった様な気がする。
あの時は、まるで馬鹿みたいにこの森を右往左往した。
それでも、全力で走ってこんなに簡単に息が切れるような事はなかったし、
ペース配分も、それなりに出来ていた様な気がする。

今はもう、この森に蝶はいない。
誰も、最強の武器なんて物は必要とはしなくなってしまったから・・・・・・

普通に生活する人々にとって、
武器を強化する為の「何だかわからんもの」なんてものは
所詮、「何だかわからんもの」に過ぎないのだ。


今、彼が目指している場所は、二人にとって純粋な、思い出の場所でもある。
浮いているのか、それともきちんと足がついているのか、
自分でもさっぱりわからない、空中遊泳さながらの、深い湖。
髪の痛みを気にしなくてもいい、塩素の入ってない、プール。


シン滅亡後、エボンの教えから解き放たれた
スピラには、工業化による、高度経済成長の波が訪れていた。
昼でも夜でも、工場は休むことなく動きつづけ
人々は浮かれ、夜でもネオンが光り輝く。
そう言えば、キマリは今年、ガガゼドの野鳥を守る会の会長に就任したといっていた。

霊峰と呼ばれ、人々が入りにくいその様な場所であってさえ、
自然は「そこにあるもの」から「守るべきもの」へと変化し始めているのである。

同時に、キマリのように「守る為に活動する者」でさえ、
その一方で、リュックから習得した「盗む」「ぶんどる」の技術をフルに活用し、
荒稼ぎをした上で、夜のスピラではキャバレンジャーの名をほしいままにしているという。
先日、遊びにきたルールーがそんなキマリを見たと言って愚痴をこぼしていた。

とは言え、そのルールーでさえも、今やスピラの高官や
財政界、裏の世界のボスたちが絶えることなく訪れるという
高級クラブ、「ルール―の世界」のママである。
その立場を利用し、裏でスピラを牛耳り、
言葉一つで、何十万ギルという金を動かす。
魔法こそ使わないが、まさに魔性の女。
ルール―の呪文、といえば今は泣く子も黙るパルプンテなのだ、と
これはリュックが言っていた。

まさに、スピラは、眠らない世界、となったのだ。

そんなスピラに、今でも新鮮な空気と水がある場所は、たった一つしかない。
彼は、そこを目指して走っていた。
  1. 2000/10/09(月) 02:56:04|
  2. 【物語】FFXのお話
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5

「お構いなく。出勤前に、少し寄っただけだから。」

いかにも血色の悪そうな紫色の唇から白い煙を吐き出すと、
黒ずくめのおばさ・・・もとい、ルールーは言った。
その傍らで、彼女は黙ってツナの空き缶を差し出す。
空き缶には少し残ってしまったツナが乾いたままでこびりついている。

昔はちゃんと、洗って捨てる子だったのに・・・・・

食べ残しのこびりついたツナ缶に
決して幸せとは言えない彼女の現状を見たようで
改めてルールーは少し悲しくなった。
しかし、それを口には出すこともできずに、
ただ黙ったまま差し出されたツナ缶に灰を落とす。
そしてそのまま、煙草を口にくわえる。

まるで、言葉が出てこない、言い訳をするかのように。


彼女もまた、ただ黙ってそれを見ていた。
人が煙草を吸っているのを見ると、自分も吸いたくなるのだが
表向きに彼女は「煙草が吸えない」事になっている。
ましてやこの時間から二人で煙草を吸えば
室内に煙がこもってどうしようもない。
どうしたって、残り香でばれてしまうだろう。
彼女の夫は、彼女が煙草を吸うことを快くは思っていなかった。

「で、どうなの。最近。うまく言ってるの?」

悩んでいたわりには単刀直入だが、
ようやくかけるべき言葉が見つかったのか、
それともこの重苦しい沈黙に耐えられなくなったのか、
再び煙をくゆらせながらルールーが口を開いた。

「え・・・?」

どうしてそんな事を聞かれるのかさっぱりわからない、
というように彼女はソファに座ったルールーを見上げる。
その目は、どこか虚ろだ。

窓から差し込む西日が逆行となって、
彼女からルール―の表情は見えなかったが、
おそらく、今のは失言だったのだろう。
取り繕う様に、ルールーは話題を変えた。

「私もね、そろそろ店の方は若い子たちに任せて、
隠居しようと思ってるの。いったでしょ?
今ね、お酒と占いの店をやってるのよ。
結構評判なのよ。よく当たるって。」

クラブ「ルール―の世界」は今やスピラ全土に知れ渡る
有名高級クラブである。
クラブのママであるルールーはその類まれな
ミステリアス、アンド ファンタスティックな容姿を武器に
お色気たっぷりに酒を出しながら
時折予言めいた事を発言するという方法で
スピラ中の高給官僚どもをめろめろにした。
おかげさまで、ルールーは儲かっている。

自分の老後が安泰となると、
他人の事が気にかかるものである。

特に妹のような存在、ユウナの事となれば
それは尚更。

だから時折、こうして「ついで」を装っては
ユウナを訪ね、様子をうかがっているのであった。

しかし、今のユウナに対して、
ルールーはかけるべき言葉を持たない。

変わってしまった全ての物から目を背け、
「過去」という重い鎖にがんじがらめになってしまっているユウナには。

今のユウナが泣くことはない。
しかし同時に無理して笑うことすらない。
ただぼんやりと行過ぎていく景色を眺めているだけ。

裏を返せば、そう言うユウナだって
「変わってしまった」のであったが
本人はそれに気がついているのかいないのか。
気がついていても、どうしようもないのかもしれない。

だから、ルールーもまた、そんなユウナに
なんと声をかけていいのやら
さっぱりわからないでいるのであった。

「そうだ。そしたらまた旅でもしようか。ユウナ。
今度はゆっくりと・・・またビサイドからはじめて…ね?
ビサイドにはリュックとワッカがいるから。
知ってる?リュックったらこーんなに太っちゃって、
いまじゃすっかり肝っ玉母さんって感じよ。
こないだ7人目が生まれたんだって。」

無理して明るい話題を出すのは気持が悪い。
ましてや黒い魔女と怖れられるルールーがそれをするのは、
違う意味でなかなかの迫力だ。

「それは・・おめでとうございます。」

他に言うべき言葉も見つからず、ユウナはとりあえずそう言った。

こんな時、本当に自分は無力だと思う。
あの時だって、もしザナルカンドからあいつがやってこなかったら、
ユウナは今、生きてはいなかったかもしれないのだ。
だけど、人々が口にするその奇跡に、
ユウナはがんじがらめになってしまっている。
またもや黙ってしまったユウナを見やり、
ルールーは小さくため息をついて立ちあがった。
当たり障りのない会話を繰り返しながら
玄関先までくると、ルールーは少し真剣な顔をしてユウナを見た。

「人は、かわるものなんだよ。ユウナ。」

その言葉にいつもと違うなにかを感じ
ユウナもまた、ルールーを見上げた。

「私達は、変わらないスピラを否定して
ここまで来たんじゃなかったの。
あの時、誰かが祈り子になって、シンを倒していたら、
スピラはなにも変わらなかったかも知れない。
あんな「奇跡」なんて起こることもなく
短いナギ説を、二人は普通に幸せに過ごしたかもしれない。
だけど、私たちは誰かが死んでぬるま湯のような生活を
送るよりも、生きて変わっていくことを選んだ。
あの時ユウナ、言ったじゃない。
『悲しくても、生きます。』って。…忘れちゃった?」


       *              


そうか。あの黒ずくめのおばさ…もとい、あれは、
ルールーだったのか。

「きゃっ。」

彼の背中に、思いっきり顔をぶつけて、彼女は立ち止まった。
いつの間にか鬱蒼と茂っていた木がなくなり、
明るい場所に出ていた。
それが、水の反射によるものだと気がついたのは、
彼が手を離し、ゆっくりと歩き始めてからだった。

  1. 2000/10/08(日) 03:02:46|
  2. 【物語】FFXのお話
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6

泉は、以前訪れた時同様に、不思議な光を反射させ
目の前を明るく照らし出していた。
シンが消え、変化を受け入れたと同時に
変わっていったスピラの中で、彼にはそこだけが、
以前と変わらぬままそこにあるかのように思えた。

いや、実際には何一つ変わってないのかもしれない。
というより、変化は当然あるべきもので、
ただ、以前のスピラがあまりにも変化を拒否していたが為に、
変化というものに敏感すぎる、それだけのことかもしれない。
以前だって変化はしていたのだ。
ただ、それに拒否反応を示すあまりに、
気付かないほどの変化しか
認められていなかった、そういうことなのだ。

あの時、彼は、しゃがみこんで泉を見つめる彼女を目指して歩いた。
今、その彼女は彼の後ろを数歩と離れない距離を置いて歩いている。

ハッピーエンド。

彼らの冒険は、そう称された。
実際に、シンが滅亡し、奇跡が起こったあの時。
二人は笑顔で再会し、二人がこれから歩もうとする道は
希望に光り輝いて見えたものだ。

人々は、彼らの再会を夢だ奇跡だああほっぺたをつねってくれ痛いじゃないか馬鹿やろー、と喜び合い、ついでに人々の希望までをも彼らに押し付けた。
ちょうど、彼女がシンを倒すための召喚士として旅をしていた、あの頃のように。
しかし、今度の旅はシンを倒すための旅ではなかった。
シンという、普遍の脅威などではなく、二人にとってはお互いが、
二人の続いていく関係が、長い、旅となったのである。

そしてそれは、スピラが変わっていくように、当然、変化した。

変化は、いい時もあれば、悪い時もある。
結果として、二人の心を離して行く事もある。

披露宴の祝辞で、ワッカが言った。

「人生は、長い旅路です。」と。

「長い旅を二人が手を取り合い、舵を漕ぎ
時には荒波を超え、力をあわせて超えていく。
それが結婚というものです。」と。

そして更に

「人生は、河の流れです。」と続けた。

結局人生ってなんなんだ、と彼は思ったが、言わないでおいた。

幸せだったから。

どうでもよかったのである。
しかし、今となってみてそれは的を得ていたなあと思うのだ。
荒波が来れば、船は押しつぶされることもある。
彼はブリッツの選手で、サーフィンをかじったことがあるが、
稲村ジェーンを乗りこなした事はない。
だけど、誰も彼を責めたりはしない。
稲村ジェーンは、武の映画の話だから、と笑って許してくれる。
しかし、彼らの船が、人生の長い旅路で
つぶされそうになった時、笑って許してくれる人はいなかった。
少なくとも、彼女はそう思い込んでいたし、
何よりも、彼女自身がそれを許そうとはしなかった。

つぶされてもいいんだと。
道を、外してしまってもいいんだと。

彼らの再会に愛と希望の物語と強い思いの奇跡を見た人々は
彼らの結婚が破綻することなどありえないと強く信じていたし
その期待は彼女をがんじがらめにした。

だから彼女はすべての変化に目をつぶり
決して今の彼を見ようとはしなかったのだ。
破綻した生活の中で常に放心状態の妻を抱えた
彼の頭髪は人工植毛に頼る以外手立てはなくなり、
更に、そんな彼を受け入れられずに彼女はより強く目をつぶった。

それは、倒しても一定期間をおいて復活するシンに
おびえながら生活していたあのころのスピラより、ずっとたちが悪かった。

結局、スピラ大好きっ子の彼女には、スピラの人々を
裏切る自分、というのに耐えられなかったのである。
それはもはや、裏切りでもなんでもないはずなのだが。
人々が勝手に期待して、彼らに物語を託したに過ぎないにも関わらず、
スピラのために、その命を捨てようとまでした彼女は、
今度はスピラの人々の期待という妄想で、彼女自身を壊そうとしていた。

もうずいぶん昔。
実際にはそんなに昔ではないけれど、
シンがまだいて、彼女がその旅に迷っていたあの時。
泉に入り、彼女が泣いたあの時。
彼は彼女を抱きしめたいと思った。
そして、大丈夫だよ、と伝えたいと思った。
伝えたいけど、何が大丈夫なのかわからなくて、
そこを突っ込まれたら困るなあ、と思った。
困るなあと思ったし、言葉にもできなかったので行動に移すしかなかった。
実際、彼女の顔を見たら、抱きしめるどころじゃ済まなくなったので
ボロが出なくて、ラッキー、とも思った。

ただ、そんなに泣かなくても大丈夫だと。
自分が信じた道と、思いを。
大切だと思っていた物からの、事実上の裏切りを。
そのために、大事なものをなくしてしまった怒りを。
その中で、道を見失い、それでも道を踏み外せないのだと泣く彼女を。
彼はただ、抱きしめたかった。
それしか伝える術はないように思えたから。
大丈夫なのだ。と。
誰も、あなたを責めはしないと。
少なくとも、俺はあなたの味方でいる、と。

  1. 2000/10/07(土) 03:08:42|
  2. 【物語】FFXのお話
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7

そして彼女もまた、同じことを考えていた。
普通恋人同士が共通の思い出の場所に来れば
同じ事を思い出すし、思い出せないなら、
その二人はどっちにしろ終わりなんだから、
そんなに不安なら、二人の思い出の場所にでも行ってみれば?と
そう言って彼女を励ましたのはリュックだった。

あれはまだ、彼女が正常だったころだ。
変わっていく彼がわからなくなって
何とかしたくて、旅を共にした仲間にだけ、そっと、相談した。

しかしリュックもまた、
「大丈夫だよ。ユウナと彼は」
などと根拠のないことを言い、彼女を落胆させた。

そして、子供が七人もいると生活が大変だ、などと愚痴をこぼし
家にある缶詰やらインスタント食品やらを根こそぎぶんどっていった。

あの時、彼女は一体何を言ってほしかったのだろう?
大丈夫だといわれたのに、どうして彼女は落胆したのであろう。
インスタント食品が惜しかったわけでは決してない。
ただ、今ならわかる気がする、と彼女は思う。
彼女は彼女の最も出したくない答を誰かの口から聞きたかったのだ。
そして、それが正解であるといってほしかったのだ。
ファイナルアンサー?ファイナルアンサー。

「え?」

彼女の小さな呟きが聞こえたのか、彼が振り向いた。

「なんでもない。」

彼女は彼に向かって微笑むと、泉の中へ足を入れた。

彼女が、ゆっくりと泉の中へ入っていく。
あの時と同じだ、と彼は思った。

でも、今、確かに、ファイナルアンサーって聞こえた。
やっぱり、少しずつだけど変わっているのだ、と彼は思う。
彼もまた、彼女に続いて、泉の中に入っていく。
あの時と、変わらないこともあるのだ、と伝えるために。
同時に、変わってしまったことを、伝えるために。

「今ね、披露宴のこと、思い出してた。」

「披露宴?」

それはまた、微妙なところからきたな、と彼は思ったが
何も言わないでおく。

「披露宴で・・・アーロンさんがね、言ったじゃない?」

「アーロン?おっさん、何言ったっけ。」

「忘れちゃったの?ほら。三つの袋の話。」

「ああ・・・なんだっけ。お袋と・・・」

「胃袋と給料袋」

最後の二つを思わずハモってしまって、二人は笑う。

「なんだかんだ言って、説教くせーんだよな。あのおっさん。」

そういって、彼が泉に浮かぶ。
そんな彼を見て、彼女がたしなめる。

「悪いよ。そんなこと言っちゃ。私たちのためを思って言ってくれてるんだから。」

不意に笑い声はやみ、沈黙が訪れる。
二人のために。二人だから。二人ならば。
二人で。二人は。二人の奇跡。

この、二人という言葉が、あの奇跡以降どれだけ二人を苦しめてきただろう。
もし、二人が、二人ではなかったら。
彼と、彼女が一人でただそこに存在していて、
そして出会って二人になったのならば。
二人でいる理由が、彼と、彼女にだけ託されていたならば。

始まりはもちろん、二人が一緒にいたいという気持ちだった。
だけど、それは、いつの間にか「二人でいること」
それ自体に意味を持ち始め、
その意味を求める人たちの間で、希望となり、
彼と彼女の物ではない、「二人の物語」が幕を開けてしまった。

彼と彼女の物ではないその物語を、彼と彼女が自ら幕を下ろすことはできず、
かといってその幕は二人にしか降ろせない場所にあって、
彼らはただ、物語を消費するしかなくなってしまったのだ。

その物語は、頑なに「二人」の変化を拒否したから。

沈黙を打ち破るように、彼女が口を開く。

「アーロンさんが言った意味がね・・・あの時はわからなかった。
三つの袋・・・お袋、胃袋、給料袋。・・・・・
だけど、今は・・・今も・・・・やっぱり、わからない。」

相変わらずの不思議少女っぷりを発揮すると
彼女もまた、泉に浮かんだ。

「もう少し二人でいたら・・・わかったのかな。」

「え?」

「二人で、がんばれば。。。がんばって、二人で・・・」

「意味がわかるまで?」

「そう。意味がわかるまで。」

「なんか、へんっすよ。それ。」

おまえのその語尾のほうがよっぽど変だ、と彼女は思ったが言わないでおく。

「がんばって、二人でいる、なんて。へんっすよ。おかしいっすよ。」

「そう・・・だね・・・変。だね。」

「うん。おかしい。二人のことだから。二人で、決めよう。」

「・・・・そうだね。二人で、決めよう。」

  1. 2000/10/06(金) 03:14:39|
  2. 【物語】FFXのお話
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8

「・・・・・・元気ないね。」

こんな話をしているのに、元気百倍、その方がおかしいじゃないか、何を言っているんだ、と彼は思ったが、そんなことは慣れっこになっていたので、まあいいや、と思った。
同時に、確信はすぐそこにあるのに、それに触れられずにいる、彼女の気持ちも
本当はわかっていたから。

「まあ・・・な。」

だから、そのまま口に出した。あいまいに濁すように。

「叫ぶ?」

「叫ばない。心臓に悪い。あんまり興奮しないように、と医者に止められてる。」

「そっか・・・・それじゃあ、」

「笑顔の練習もしない。・・・・・・・・ユウナ。ちゃんと、話し合おう。」

「うん・・・・・」

  1. 2000/10/05(木) 03:15:50|
  2. 【物語】FFXのお話
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9

ここは、本当に昔のままだ。と彼女は思う。
具体的に、どこがどうとはいえないが、
彼女にとっては、ここは以前のままだ。
そして、おそらく、彼にとってもそうだろうと思う。

だからこそ、二人はここでもう一度、出会うことができたのだ。
二人が奇跡になんか、奉り立てられる前の、ただの二人に。
そしてここを出たら、二人はまた「奇跡の二人」となる。
何の奇跡も起こせない、ただの男と女なのに。
しかも、二人はもはや、ただの中年のおじさんとおばさんなのに。
安定した生活を抱えて、運命と呼ばれた恋も、もはや過去の遺物に過ぎない、それなのに。

変わってしまったのは、ずっと彼のほうだと思っていた。
だけど、頑なに変化を拒否する事で変わってしまっていたのは、
むしろ自分のほうであったのかもしれない、
今になって彼女は思う。

この泉を、二人で出てはいけない。
二人ではなく、別々の、一人として。
ここを出て、道を探さなければいけない。

あの時、道を見失って、それでも道から外れられなくて
泣き出した彼女の涙を止めてくれたのは、ここにいる彼だった。

今になって思えば、あの時彼女は誰かに許してほしかったのだ。

誰かに、許しを請いたかった。

旅を、迷う自分を。怖くて、誰かにすがりたいと思う自分を。
そして一言、大丈夫だ、といってほしかったのだ。
彼はそれをした。
そういってもらえることで、彼女は道を作ろうと覚悟を決めたし
何も恐れることはないのだと思えたのだ。

大丈夫だよ。

そして今、彼女は、自分自身で、自分を許そうと思う。
彼と二人でいることができない自分を、許そうと思う。
私は、スピラの希望なんかじゃないのだ、と
声を大にして言おうと思う。
私は、私にとっての、希望なのだ。
それでいいじゃないかそうだそうだ。と、そう思う。
そしてそんな自分を、誰が許してくれなくてもいいとさえ思う。

そうなって初めて、あなたがいてよかった、と、そう思うから。
あなたはずっと、私の希望でいてくれようとしたのだ。
だから、あなたを解放してあげようそうしよう。

そして、そうやって寄り添った二人は
どんな妄想よりもずっと、真実だったのだ。
あなたはずっと私のそばにいて、大丈夫だと言い続けてくれた。
それは夢でも妄想でもない、本当に真実だったのだ。
奇跡でも希望でもない、二人だけの真実だったのだ。
だから、それが真実であるために、
二人の幕引きは二人で行うべきなのだ。

  1. 2000/10/04(水) 03:19:44|
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10

「ごめんね。」

それしか言葉が出なくて、彼女は彼にそう伝えた。

彼は、ゆっくりと首を振った。
ずっと、ここにいさせて、ごめん。
ずっと、終わりにさせなくて、ごめん。
披露宴とか、いろいろさせて、ごめん。
しかも、白いタキシードで、ごめん。

彼が、首を振る。

禿げるまで、一緒にいさせて、ごめん。
それじゃあキノック老師みたい。あはははは。
ほんとうだね。あはははは。
涙なのか、それとも泉の水が顔にかかったせいなのか
彼がぼやけて見える。

そういう存在なのだから、道理だ、といわれたらそれまでなのだが、
どうしても引き止めたいと思う。だけど、引き止めてはいけない
と今度こそ、本当に思っている。

大丈夫だよ。

声にはならなかったが
彼の唇が、そう動いた。

大丈夫だね。

声にはならなかったけれど
彼女はただ、うなずいた。
そしてゆっくりと、彼の姿は消えた。


        *



マカラーニャの聖なる泉には、真実だけが現れる。
「二人の奇跡」をなくしたスピラの人々は
そこに新たな伝説を作り、観光の名所とした。

会いたい人を思ってその泉にコインを投げなさい。
横手で投げて、三回バウンドさせなさい。
そして泉のほとりまで行って、会いたい人を思いなさい。
するとあなたの思う人が、本物と偽者のコインを持って
現れるでしょう。会いたい人は、あなたに聞くでしょう。
「あなたが落としたコインは、真実のコインか。
それとも、妄想のコインなのか、と。」

マカラーニャの泉は、今日もたくさんの人でにぎわっている。

  1. 2000/10/03(火) 03:21:42|
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