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7

そして彼女もまた、同じことを考えていた。
普通恋人同士が共通の思い出の場所に来れば
同じ事を思い出すし、思い出せないなら、
その二人はどっちにしろ終わりなんだから、
そんなに不安なら、二人の思い出の場所にでも行ってみれば?と
そう言って彼女を励ましたのはリュックだった。

あれはまだ、彼女が正常だったころだ。
変わっていく彼がわからなくなって
何とかしたくて、旅を共にした仲間にだけ、そっと、相談した。

しかしリュックもまた、
「大丈夫だよ。ユウナと彼は」
などと根拠のないことを言い、彼女を落胆させた。

そして、子供が七人もいると生活が大変だ、などと愚痴をこぼし
家にある缶詰やらインスタント食品やらを根こそぎぶんどっていった。

あの時、彼女は一体何を言ってほしかったのだろう?
大丈夫だといわれたのに、どうして彼女は落胆したのであろう。
インスタント食品が惜しかったわけでは決してない。
ただ、今ならわかる気がする、と彼女は思う。
彼女は彼女の最も出したくない答を誰かの口から聞きたかったのだ。
そして、それが正解であるといってほしかったのだ。
ファイナルアンサー?ファイナルアンサー。

「え?」

彼女の小さな呟きが聞こえたのか、彼が振り向いた。

「なんでもない。」

彼女は彼に向かって微笑むと、泉の中へ足を入れた。

彼女が、ゆっくりと泉の中へ入っていく。
あの時と同じだ、と彼は思った。

でも、今、確かに、ファイナルアンサーって聞こえた。
やっぱり、少しずつだけど変わっているのだ、と彼は思う。
彼もまた、彼女に続いて、泉の中に入っていく。
あの時と、変わらないこともあるのだ、と伝えるために。
同時に、変わってしまったことを、伝えるために。

「今ね、披露宴のこと、思い出してた。」

「披露宴?」

それはまた、微妙なところからきたな、と彼は思ったが
何も言わないでおく。

「披露宴で・・・アーロンさんがね、言ったじゃない?」

「アーロン?おっさん、何言ったっけ。」

「忘れちゃったの?ほら。三つの袋の話。」

「ああ・・・なんだっけ。お袋と・・・」

「胃袋と給料袋」

最後の二つを思わずハモってしまって、二人は笑う。

「なんだかんだ言って、説教くせーんだよな。あのおっさん。」

そういって、彼が泉に浮かぶ。
そんな彼を見て、彼女がたしなめる。

「悪いよ。そんなこと言っちゃ。私たちのためを思って言ってくれてるんだから。」

不意に笑い声はやみ、沈黙が訪れる。
二人のために。二人だから。二人ならば。
二人で。二人は。二人の奇跡。

この、二人という言葉が、あの奇跡以降どれだけ二人を苦しめてきただろう。
もし、二人が、二人ではなかったら。
彼と、彼女が一人でただそこに存在していて、
そして出会って二人になったのならば。
二人でいる理由が、彼と、彼女にだけ託されていたならば。

始まりはもちろん、二人が一緒にいたいという気持ちだった。
だけど、それは、いつの間にか「二人でいること」
それ自体に意味を持ち始め、
その意味を求める人たちの間で、希望となり、
彼と彼女の物ではない、「二人の物語」が幕を開けてしまった。

彼と彼女の物ではないその物語を、彼と彼女が自ら幕を下ろすことはできず、
かといってその幕は二人にしか降ろせない場所にあって、
彼らはただ、物語を消費するしかなくなってしまったのだ。

その物語は、頑なに「二人」の変化を拒否したから。

沈黙を打ち破るように、彼女が口を開く。

「アーロンさんが言った意味がね・・・あの時はわからなかった。
三つの袋・・・お袋、胃袋、給料袋。・・・・・
だけど、今は・・・今も・・・・やっぱり、わからない。」

相変わらずの不思議少女っぷりを発揮すると
彼女もまた、泉に浮かんだ。

「もう少し二人でいたら・・・わかったのかな。」

「え?」

「二人で、がんばれば。。。がんばって、二人で・・・」

「意味がわかるまで?」

「そう。意味がわかるまで。」

「なんか、へんっすよ。それ。」

おまえのその語尾のほうがよっぽど変だ、と彼女は思ったが言わないでおく。

「がんばって、二人でいる、なんて。へんっすよ。おかしいっすよ。」

「そう・・・だね・・・変。だね。」

「うん。おかしい。二人のことだから。二人で、決めよう。」

「・・・・そうだね。二人で、決めよう。」

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  1. 2000/10/06(金) 03:14:39|
  2. 【物語】FFXのお話
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