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6

泉は、以前訪れた時同様に、不思議な光を反射させ
目の前を明るく照らし出していた。
シンが消え、変化を受け入れたと同時に
変わっていったスピラの中で、彼にはそこだけが、
以前と変わらぬままそこにあるかのように思えた。

いや、実際には何一つ変わってないのかもしれない。
というより、変化は当然あるべきもので、
ただ、以前のスピラがあまりにも変化を拒否していたが為に、
変化というものに敏感すぎる、それだけのことかもしれない。
以前だって変化はしていたのだ。
ただ、それに拒否反応を示すあまりに、
気付かないほどの変化しか
認められていなかった、そういうことなのだ。

あの時、彼は、しゃがみこんで泉を見つめる彼女を目指して歩いた。
今、その彼女は彼の後ろを数歩と離れない距離を置いて歩いている。

ハッピーエンド。

彼らの冒険は、そう称された。
実際に、シンが滅亡し、奇跡が起こったあの時。
二人は笑顔で再会し、二人がこれから歩もうとする道は
希望に光り輝いて見えたものだ。

人々は、彼らの再会を夢だ奇跡だああほっぺたをつねってくれ痛いじゃないか馬鹿やろー、と喜び合い、ついでに人々の希望までをも彼らに押し付けた。
ちょうど、彼女がシンを倒すための召喚士として旅をしていた、あの頃のように。
しかし、今度の旅はシンを倒すための旅ではなかった。
シンという、普遍の脅威などではなく、二人にとってはお互いが、
二人の続いていく関係が、長い、旅となったのである。

そしてそれは、スピラが変わっていくように、当然、変化した。

変化は、いい時もあれば、悪い時もある。
結果として、二人の心を離して行く事もある。

披露宴の祝辞で、ワッカが言った。

「人生は、長い旅路です。」と。

「長い旅を二人が手を取り合い、舵を漕ぎ
時には荒波を超え、力をあわせて超えていく。
それが結婚というものです。」と。

そして更に

「人生は、河の流れです。」と続けた。

結局人生ってなんなんだ、と彼は思ったが、言わないでおいた。

幸せだったから。

どうでもよかったのである。
しかし、今となってみてそれは的を得ていたなあと思うのだ。
荒波が来れば、船は押しつぶされることもある。
彼はブリッツの選手で、サーフィンをかじったことがあるが、
稲村ジェーンを乗りこなした事はない。
だけど、誰も彼を責めたりはしない。
稲村ジェーンは、武の映画の話だから、と笑って許してくれる。
しかし、彼らの船が、人生の長い旅路で
つぶされそうになった時、笑って許してくれる人はいなかった。
少なくとも、彼女はそう思い込んでいたし、
何よりも、彼女自身がそれを許そうとはしなかった。

つぶされてもいいんだと。
道を、外してしまってもいいんだと。

彼らの再会に愛と希望の物語と強い思いの奇跡を見た人々は
彼らの結婚が破綻することなどありえないと強く信じていたし
その期待は彼女をがんじがらめにした。

だから彼女はすべての変化に目をつぶり
決して今の彼を見ようとはしなかったのだ。
破綻した生活の中で常に放心状態の妻を抱えた
彼の頭髪は人工植毛に頼る以外手立てはなくなり、
更に、そんな彼を受け入れられずに彼女はより強く目をつぶった。

それは、倒しても一定期間をおいて復活するシンに
おびえながら生活していたあのころのスピラより、ずっとたちが悪かった。

結局、スピラ大好きっ子の彼女には、スピラの人々を
裏切る自分、というのに耐えられなかったのである。
それはもはや、裏切りでもなんでもないはずなのだが。
人々が勝手に期待して、彼らに物語を託したに過ぎないにも関わらず、
スピラのために、その命を捨てようとまでした彼女は、
今度はスピラの人々の期待という妄想で、彼女自身を壊そうとしていた。

もうずいぶん昔。
実際にはそんなに昔ではないけれど、
シンがまだいて、彼女がその旅に迷っていたあの時。
泉に入り、彼女が泣いたあの時。
彼は彼女を抱きしめたいと思った。
そして、大丈夫だよ、と伝えたいと思った。
伝えたいけど、何が大丈夫なのかわからなくて、
そこを突っ込まれたら困るなあ、と思った。
困るなあと思ったし、言葉にもできなかったので行動に移すしかなかった。
実際、彼女の顔を見たら、抱きしめるどころじゃ済まなくなったので
ボロが出なくて、ラッキー、とも思った。

ただ、そんなに泣かなくても大丈夫だと。
自分が信じた道と、思いを。
大切だと思っていた物からの、事実上の裏切りを。
そのために、大事なものをなくしてしまった怒りを。
その中で、道を見失い、それでも道を踏み外せないのだと泣く彼女を。
彼はただ、抱きしめたかった。
それしか伝える術はないように思えたから。
大丈夫なのだ。と。
誰も、あなたを責めはしないと。
少なくとも、俺はあなたの味方でいる、と。

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  1. 2000/10/07(土) 03:08:42|
  2. 【物語】FFXのお話
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