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3

それは、どこかで見た事のある風景だった。
青い、どこか、森のような風景。
いつのまに、こんな所まできたのだろう?
さっきまでの自分は、夫がいる身でありながら、
失ってしまった恋人に思いを馳せ、
その罪悪感から夫のために、必死で風呂を磨いていたというのに。

・・そうだ・・連れ出されたのだったわ。
あの時、確かに、ザナルカンドエイブスのエース君、
君がいた。・・・じゃあ、この隣ではしっているのは、誰?
・・・・夫?・・・夫って・・?私・・・・・

冷たい夜気に触れ、しばらく走っていると、まず最初に涙がかわいた。
それから、冷たい空気を肌で感じるようになり、
やがてその感触が脳を覚醒させ、それまではぼんやりともやがかかっているようで
どこか遠くにあるようだった風景が、くっきりはっきりとその輪郭を帯びてきた。

なんだかひさしぶり。
本当に久しぶりに。
こんな風に景色が見えるような気がするわ…


何もかもがクリアーになり、脳が、いや、心が、まるできっちり6時間眠って起きた朝のように澄みきっている。


やがて少しづつではあるが五感が戻り
冷たい向かい風の抵抗を全身で受けとめ
彼女の体がすっかり冷えきった頃には。
彼女の感覚は「痛いほど寒い」と
感じるまでになっていた。

ただ、一点を残しては。

ふらつく彼女の足を支えるために、
彼女を抱えるようにして腰にまわされた彼の腕。
ほんの少しだけ前を行き、彼女を導く為に繋がれた彼の手。
そんなフォークダンスのような体勢が歩きやすいわけはなく、
彼女の足は、もつれにもつれた。
それでも、彼女ははっきりと感じた。
冷たい風に当たり、水っ洟はさっきよりもひどくなっていたが、
それでも、一緒に走る彼を、彼女は本当に久しぶりに見た様な気がしたのだった。


随分と、薄くなっちゃったんだなあ…


ほんの少しだけ前を走っているわけだから
自ずと彼の後頭部にその目は注がれる。
夜の闇の中でも、彼の明るい髪の色は目立った。

だから、あんまり染めない方がいいよっていったのに…

ただでさえ、水中でやるスポーツの選手なのだ。
プールの塩素が、髪にいいわけはない。

それでも、彼は染めつづけた。
スピラでの彼は「終わらないナギ説を作り出した英雄の一人」であり、
スピラ中が夢中のあのスポーツ、ブリッツボールのエースなのだから。

そうすることで得られるイメージは、何よりも、大切なものであったらしい。

スピラ中の人々が彼に「常勝」を期待し、「英雄」である事を求める。
基本的にお調子ものだから、彼もそれに答えようとする。
その結果、でてきた白髪は幾度となく染め直され、
細く、コシがなくなってきた髪の毛は年々ハードな
ジェルやワックスで固められた。
抜けるのは、当然である。

いや、本当は、人々の期待に答える為だけではない。
彼自身もまた、おとろえゆく自分の体を
そうすることで、ごまかし続けていたのだろう。

いくらスポーツの選手だからといってよる年波には勝てない。
すぐ傍を走る彼の体は、かつてシンを倒す為に共に走ったあの時と同じではないし
そして自分もまた、彼から見れば、確実に年をとっているのだろう。

そう言えば…この間黒ずくめのおばさんが
突然やってきて・・・・・・誰なのかしらと思っていたけれど。
そうか・・・・・・あれは、ルーだったのだわ。

急にクリアになった頭は、本人が聞いたら
怒りそうなくらい失礼な事を平然と考え始めるようになっていた。

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  1. 2000/10/10(火) 02:51:10|
  2. 【物語】FFXのお話
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