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彼が駆けつけた時、浴槽は既にピカピカだった。
いや、正確にはそう見えただけだったのかもしれない。
何故なら、彼がここにかけつけるまでの間に
わずかながらも浴室から漏れ出たその気体が
彼の目を少しずつ汚染していたから。

足を踏み入れた瞬間、むせかえるほどの刺激が彼の鼻を襲った。
更に目の奥がチカチカとし、白を基調とした浴室は
複数の光の点滅でまぶしいほどに輝いて見える。
思わず目を細め、なんとかその焦点を合わせると、
浴室のちょうど中央で、空になった洗剤の容器を握り締め、
彼女がぼんやりと座っていた。
更にその傍らには「こすらずよく落ちる!」という謳い文句で有名な違う種類の洗剤の容器。
手にとってそれを見れば、そちらもすっかり空だった。

おそらく、焦点があっていないだろうその目で
彼女がぼんやりとこちらを振り返る。

左右違った色の目にはとめどなく、涙。
すっきりと通ってはいるが決して高すぎない鼻からは、いわゆる、水っ洟。
口は半開きにゆるくあけられており、そうでもしなければ呼吸すらままならない様子。
おまけに、喉の異物をなんとか外に出そうと、とめどなく咳込んでいる。

「やっばり、ぎでぐれだんだで・・・
ざなるがんどえいぶしゅのえーしゅぐん・・・」

何度も咳込みながら、ときたま嗚咽を練りこみ
涙と鼻水とよだれで顔をぐしゃぐしゃにしながら、
やっとそれだけ、彼女は言った。
(正確には、彼がやっとそれだけを聞きとれた。)


「何やってるんだよ!風呂掃除の時には
換気扇回せっていったじゃないか!!」



大きく浴室のドアを開け放ち、彼は怒鳴った。
更に、手に持った容器を一瞥し、怒りに任せて浴室の外に放り投げた。


「混ぜるな危険って書いてあるじゃないか!!」


怒りの為なのか、それともこの塩素のせいなのか
自分も涙ぐんでいることがわかる。

いけない。早く、ここから立ち去らなければ。


「助けるッす!」


自分を元気付ける為か、それとも彼女にそう伝えたかったのか。
無理矢理若物ぶって昔の口癖なんぞをいってみる。
同時にそんな自分がおかしくなって、少し、笑ってしまう。

もうこんな口癖が、似合う年でもないのに・・・・

かつてはシンを倒した英雄も、そして奇跡的に海から生まれなおした男も
今では倦怠期を迎えた、どこにでもいる夫婦の片割れである。

そう、ほんのちょっと前までは、
彼らの絆が、終わらないナギ説と、
出来る筈のない再会という奇跡を生んだのだ、
そんな風にスピラ中をわかせていたというのに。
そして今でも、その絆が、永遠であると、
スピラ中の人たちが信じていると言うのに。


その永遠を、最も信じている人物が、
誰よりも、今の二人を受け入れられないなんて。


永遠なんて、俺達が終わらせてやる。
そういって、あの闘いに挑んだというのに。
皮肉なものだ。

とかなんとか、今は考えている場合ではない。
とにかく、彼女と二人、ここから脱出しなければ。
息が出来なくなるほどのこの刺激の中で
彼自身も必死であった。

ぼんやりしてる場合じゃない。

こんな所に長時間いたら、自分も意識を失ってしまう。
今や一発逆転回復魔法をつかえる相手が最も「混乱」状態なのだ。
とにかく、綺麗な空気。そして水。
それを求めて、彼は、彼女をつれて走り始めた。
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  1. 2000/10/11(水) 02:29:01|
  2. 【物語】FFXのお話
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